令和2年度 奈良金春会演能会
能「生田」(いくた)
法然上人に仕える男(ワキ)が、少年(子方)を連れて加茂社へ向かっている。実は、この少年は加茂の下り松のもとで法然に拾われた子で、一の谷で討たれた平敦盛の忘れ形見であった。加茂社で父との対面を祈った少年は、津国生田の森へ行けという霊夢を蒙る。生田の森で少年と男が庵に宿を乞うと、中には敦盛の霊(シテ)がおり、親子は対面を果たす。霊は源氏に追われた平家一門の物語を語り、修羅道の戦いの様を見せると涙ながらに消え去る。
金春禅鳳作。修羅道の苦しみだけでなく、親子の情愛の深さも描かれている修羅能です。
能「葵上」(あおいのうえ)
朱雀院の臣下(ワキツレ)が光源氏の正妻葵上の病の原因を探るために、照日の巫女(ツレ)を招く。巫女の梓弓の音が響く中、源氏の恋人六条御息所の生霊(前シテ)が現れる。生霊は華やかな過去を偲び、源氏の愛を失った恨みをかきくどくと、病床の葵上を打ち据え、あの世へ連れ去ろうとする。葵上の実家左大臣家の従者(アイ)が横川小聖(ワキ)を呼んでくる。横川小聖が祈祷を始めると、御息所が鬼女(後シテ)の姿で再び出現する。鬼女は小聖に立ち向かうが、ついに祈り伏せられる。
『源氏物語』の葵巻に取材。前半には「車」の語が多く謡い込まれ、御息所の怨念の源が加茂の祭での車争いにあることを暗示しています。
解説 中司 由起子
令和3年度 奈良金春会演能会 予定日
4月25日(日) 6月27日(日) 9月19日(日) 11月28日(日)
令和3年度 奈良金春連合会 謡曲・仕舞会 予定日
7月18日(日)
古式ゆかしく
自然そのものを舞台として
演ぜられる能楽をご堪能ください
令和2年度 奈良金春会演能会
能「楊貴妃」(ようきひ)
唐の玄宗皇帝の命を受けた方士(道教の呪術師・ワキ)が、亡くなった楊貴妃(シテ)の霊魂を探し求める。方士は常世の国蓬莱宮にたどり着き、常世の国の男(アイ)の案内で貴妃と出会う。貴妃は形見の玉のかんざしを方士に与え、皇帝と交わした永遠の愛を表す言葉「比翼の鳥、連理の枝」を出会いの証拠とするように告げて舞を舞う。方士は都に帰るが、貴妃はひとり宮にとどまる。
仙宮に寂しく住む貴妃の美しくも哀愁漂う風情が表現されます。貴妃の舞う「序ノ舞」も見どころ。金春禅竹作。
能「阿漕」(あこぎ)
伊勢神宮に参詣する僧(ワキ)が、伊勢国(三重県)阿漕が浦を訪れる。そこへ漁師の老人(前シテ)が現れ、僧と言葉を交わす。老人は浦にまつわる阿漕の物語を語り始める。昔、阿漕と呼ばれる男が毎夜、禁漁区で漁をしていたが、ついに露見して沖に沈められた。そして自分こそ阿漕の霊とほのめかし消え失せる。浦の男(アイ)に話を聞いた僧が供養をすると、阿漕の霊(後シテ)が現れる。辺りには地獄の情景が出現し、魚は悪魚毒蛇となって霊を責めるが、霊はさらなる供養を願い、波の底に消えてゆく。
阿漕の霊は、四ツ手綱という網に魚を追い込む漁の様子を再現してみせます。
解説 中司 由起子
次回予告
11月29日(日) 能「生田」髙橋 忍 能「葵上」金春 安明
令和2年度 奈良金春会演能会
能「源太夫」(げんだゆう)
勅使(ワキ)が従者(ワキツレ)を伴い尾張国熱田明神に参詣し、老夫婦(前シテ・前ツレ)と出会う。老夫婦は熱田明神と出雲の神が一体であることや、素戔烏尊(そさのおのみこと)の詠んだ「八雲立つ出雲八重垣」の歌の謂れ、日本武尊(やまとだけのみこと)が素戔烏尊の再来であることを教え、素戔烏尊が出雲で大蛇を退治して手摩乳(てなずち)と脚摩乳(あしなずち)の娘稲田姫を救った物語を語る。さらに二人は、老翁脚摩乳が名を変えて源太夫の神となり、東海道の守護神となったと述べ、自分たちは手摩乳と脚摩乳であると正体を明かし、消え失せる。熱田明神の末社の神(アイ)が現れ、大蛇退治の物語を語り、舞楽の太鼓を持ち出す。やがて日本武尊の妃橘姫(後ツレ)と源太夫の神(後シテ)が出現し、源太夫は太鼓を打ち、二人は舞楽を舞う。
橘姫と源太夫の神は「楽」を舞います。金春流のみが現行曲とする作品です。
能「杜若」(かきつばた)
旅の僧(ワキ)が三河国八橋で杜若に見とれていると、女(シテ)が声をかける。女は在原業平が詠んだ杜若の和歌「唐衣着つつ馴れにし妻しあれば、遥々来ぬる旅をしぞ思う」の話をし、僧を庵に案内する。業平の思い人、高子(たかきこ)の后の衣と業平の冠を身につけた女は、自分は杜若の精であると明かす。さらに業平は歌舞の菩薩であると述べて、『伊勢物語』の恋物語を語り舞う。
『伊勢物語』に描かれた、業平の数々の恋や、東下りを謡った長大な曲舞と序ノ舞が中心で、杜若の花の精に、高子と業平のイメージが重なり合って見える艶やかな能です。
解説 中司 由起子
次回以降の予定
7月12日(日) 午前中 連合謡曲仕舞会
午後1時頃から 能「弱法師」「胡蝶」
9月27日(日) 能「楊貴妃」「阿漕」
11月29日(日) 能「生田」 「葵上」
令和2年度 奈良金春会演能会
能「弱法師」(よろぼうし)
河内の国に住む高安通俊(ワキ)が讒言を信じ、我が子の俊徳丸を家から追い出した。俊徳丸は行方知れずとなり、悔いた通俊はある年の如月彼岸の中日に、四天王寺で施しをおこなう。通俊の従者(アイ)が施しを告げると、盲目ゆえに弱法師と呼ばれる男(シテ)が現れ、四天王寺の縁起を語る。その姿を見た通俊は、弱法師こそ我が子であると気づく。やがて日想観(じっそうがん)の時になると、弱法師は心眼で難波の景色を見渡すが、人々に突き当たり倒れ伏す。夜になり、親子は再会を果たす。
舞台は、梅の花匂う四天王寺の境内。日想観とは彼岸の中日に夕日を眺め極楽往生を願うことです。
能「胡蝶」(こちょう)
旅の僧(ワキ)が供の僧(ワキツレ)を連れて都の一条大宮を訪れる。梅の花を眺める僧に女(前シテ)が声をかける。女は胡蝶の精であると明かし、四季に咲く花とは戯れることができるのに、早春の梅花には縁が薄いと嘆き、夕暮れの空に消え失せる。近くに住む男(アイ)から胡蝶の話を聞いた僧が供養をすると、夢の中に胡蝶の精(後シテ)が現れ、梅花とも縁を得ることができたと喜び、舞を舞う。
紅梅に戯れるような胡蝶の精の可憐な舞が中心の作品です。胡蝶に関する和漢の故事が多く引用されています。
解説 中司 由起子
次回以降の予定
6月21日(日) 能「源太夫」「杜若」
7月12日(日) 連合謡曲仕舞会(午前中)
9月27日(日) 能「楊貴妃」「阿漕」
11月29日(日) 能「生田」 「葵上」
花見客の喧騒を嫌う西行法師の夢中に
白髪の老翁として現れた桜の精が春の夜に見せる老体の舞...
その閑かで美しい舞こそ
世阿弥が後世に遺そうとした老いの美なのでしょう
仕舞「高砂」(たかさご)
狂言「附子」(ぶす)
能 「鉢木」(はちのき)
古式ゆかしく
自然そのものを舞台として
演ぜられる能楽をご堪能ください
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